この回では、パソコン上で動く「文章要約アプリ」を45分で作ります。完成後はテキストを貼り付けてボタン(またはEnter)で要約、短/中/長の長さも切り替えられます。
準備(ツール導入・APIキーの安全管理)から、Codexへの依頼、動作確認、改善、エラー対処までを一歩ずつ説明します。
この回のゴール
- できること:OpenAI APIを使い、テキストを短・中・長で要約する最小アプリを完成させる。
- 用意するもの:PC、VS Code、Python 3.10+、OpenAIアカウントとAPIキー。
- 大切な約束:APIキーはコードに書かず.envなどで安全に管理し、公式ドキュメントで最新仕様を確認する。
最初に知っておきたい用語
- OpenAI API:テキスト生成などをアプリから呼び出すための公式サービス。
- OpenAI Codex:VS Code内で指示を書くとコード作成を手伝うAIの助手。
- CLI:画面に文字だけが出る実行方法。質問に答えて結果が表示される簡単な操作窓口。
- 環境変数:パソコン内の隠しメモのような設定。アプリが鍵や設定を読むために使う。
- .env:環境変数をファイルでまとめて置く方法。鍵はここに置き、公開しない。
- 依存関係:アプリが動くために一緒に入れる必要がある外部の部品(ライブラリ)。
- Responses API:OpenAI APIでテキストを生成・変換するための統一された呼び出し口。
この記事でできること

この記事では、次の3点を達成します。AIは「言葉を計算する電卓」のような道具、と一度だけたとえます。難しい仕組みは置いておき、正しくボタンを押せば狙った要約が返る、という感覚で進めます。例えば長いプリントを3分で読み直す代わりに、3〜5行のメモにしてくれるイメージです。
- 45分で長文を要約して要点を返す最小アプリを作る。
- VS CodeでOpenAI Codexと協力して開発する手順を学ぶ。
- 要約の長さ(短/中/長)を切り替える改善まで行う。
完成イメージ

出来上がり後の姿を、料理のレシピ写真のように先に見ておきます。どんな操作をすれば、どんな見た目で、どんな結果が出るのかを具体的に想像できると、迷いにくくなります。
- 起動するとテキストを貼り付けて「要約」を押すだけのCLI/簡易UI。
- 出力は3〜5行の要点(短)で、切り替えで(中/長)に調整可能。
- 画面の例:上に注意書き(個人情報を入れない)、中央に入力、下に要約結果。待機中は「生成中…」の表示。
最初に知っておきたいこと

ここでは、旅に出る前の地図の確認をします。道具の正体と、安全のルールを短く押さえます。
- AIは言葉を計算する道具です。電卓に数字を入れると答えが出るように、文章を入れると要約などの結果が返ります。
- 本記事で使うAIはOpenAI APIのテキスト生成機能で、Responses APIから呼び出します。
- CodexはVS Code内の助手です。人が書く「指示文(プロンプト)」を元に、必要なファイルやコードを作ってくれます。
- 個人情報や機密は入れないでください。安全設計の考え方はOpenAIのSafety Best Practicesに従います。
- 料金やモデルは変わります。最新はOpenAIのQuickstartとPricing、テキスト生成ガイドを参照してください。
対象読者

このガイドは、スポーツの初心者向け体験会のように、初めての人が迷わず試せる流れにしています。
- プログラミング初学者〜ビジネス職。
- APIを使った文章処理の最小アプリを作りたい人。
- Windows/MacのどちらでもOK。
前回の手順をまだ終えていない場合は、シリーズ第2回の記事を先に確認するとスムーズです。AIを読む人から使う人へ:中学生にも分かるChatGPT APIでAI返信文生成アプリ作り #2
必要なものと入れ方

ここでは、家を建てる前の工具そろえのイメージで、道具をそろえます。必要なツールごとに「これは何?」「用意するもの」「入れ方・開き方」「最初の設定」「できたか確認」を順に進めます。
VS Code
- これは何?:ノートと鉛筆が一体化した作業机。ファイル編集、実行、拡張の追加まで1か所でできます。
- 用意するもの:PC、安定したインターネット、MicrosoftアカウントまたはGitHubアカウント。
- 入れ方・開き方:公式サイト(トップ)から入手し、案内に従ってインストールします。アプリを起動します。
- 最初の設定:左下のアカウントアイコン→Sign in→MicrosoftまたはGitHubを選び、画面の案内に従って認証します。
- できたか確認:右上または左下に自分のアカウント名/アイコンが表示されていればサインイン成功です。
OpenAI Codex(VS Code拡張)
- これは何?:頼れる家庭教師。やりたいことを文章で伝えると、必要なファイルやコード案を作ってくれます。
- 用意するもの:VS Code、OpenAIアカウント(ChatGPTアカウントまたはOpenAI APIキー)。
- 入れ方・開き方:VS Code左のサイドバーにある「拡張機能」アイコン(四角の組み合わせ)を押し、検索欄に「Codex」と入力。発行元がOpenAI(Publisher: OpenAI)である「OpenAI Codex」拡張を選び、「インストール」を押します。名称や表示が変更される場合があります。検索時に「OpenAI Codex」「OpenAI」などの語を使い、発行元がOpenAIであることを必ず確認してください。インストール後、サイドバーにCodexのアイコンが追加されます。
- 最初の設定:Codexのペインを開き、「Sign in」や「Connect」などのボタンから、ChatGPTアカウントまたはOpenAI APIキーでサインインします。画面の案内に従って許可します。
- できたか確認:Codexのチャット欄が表示され、入力ボックスにプロンプトを打てる状態であればOKです。ペインのヘッダーにOpenAIアカウントまたは接続情報が表示されます。
注意:VS Code拡張の名称・UIは更新されることがあります。偽拡張を避けるため、発行元(Publisher)がOpenAIであることを必ず確認してください。もし見つからない場合は、OpenAIの拡張の名称変更や提供停止の可能性があります。その場合は、VS Codeの拡張検索で最新の「OpenAI」公式拡張を確認し、同等の「コード生成支援」機能と「OpenAIアカウントでのサインイン」を備えるものを選んでください。
Python 3.10+
- これは何?:手順どおりに動くロボット。文章を渡してAPIを呼び、結果を受け取る役目をします。
- 用意するもの:PCの管理者権限、ダウンロードしたインストーラー。
- 入れ方・開き方:公式サイトからインストールします。Windowsはインストーラーで「Add Python to PATH」を有効に。macOSはpkgを実行。
- 最初の設定:VS Codeを開き、作業用の空フォルダを「ファイル→フォルダーを開く」で開きます。
- できたか確認:VS Codeのメニュー「Terminal→New Terminal」を開き、python –versionの実行結果が3.10以上ならOK(Codexに確認方法を聞いてもOK)。
OpenAIアカウントとAPI利用準備
- これは何?:APIを使うための会員証と利用券。
- 用意するもの:メールアドレス、支払い方法(必要に応じて)。
- 入れ方・開き方:OpenAIの開発者向けサイトにサインアップ/サインインし、ダッシュボードの「API keys」セクションに進みます。UI文言は変わるため、サイト内検索で「API keys」を探す方法も覚えておきましょう。
- 最初の設定:新しいAPIキーを作成します。キーは一度しか完全表示されないことが多いので、後で安全に保存します。
- できたか確認:ダッシュボードのAPI keys一覧に新しいキー名が表示されていれば発行成功です。料金は変動するため、必要に応じてPricingページも確認してください。
エージェントと作るものの全体像

全体像は、料理の流れ(材料→調理→盛り付け)に似ています。材料は「ユーザーの文章」、調理は「PythonアプリがOpenAI APIに依頼」、盛り付けは「要約を表示」です。
- 構成:ユーザー入力 → アプリ(Python) → OpenAI API(Responses API) → 要約出力。
- 必要ファイル:main.py、.env、requirements.txt、README.md。
- APIキーは環境変数で読み込み、コードに直書きしない。
手順1: ツールを準備する

1-1 目的と流れ
ここでは開発机を整えます。VS Codeを入れてサインインし、Pythonを動かせる状態にし、Codexのチャットが開けることを確認します。
1-2 画面で行う操作
- VS Codeを開き、左下のアカウントから「Sign in with Microsoft/GitHub」を選んでログイン。右上にアカウント名が出ればOK。
- メニュー「Terminal→New Terminal」でターミナルを開く。
- Pythonのバージョン確認は「python –version」で3.10以上かを確認(Codexにやり方を聞いてもOK)。
- 仮想環境の作成と有効化は、OSで操作が異なるためCodexに具体コマンドの提示を依頼します。成功サインはターミナルの先頭に(venv)のような表示が出ること。
- 拡張機能からOpenAI Codexを検索し、発行元OpenAIであることを確認してインストール。サインインしてチャット欄を開く。
1-3 うまくいかないとき
- サインインに失敗する:インターネット接続とブラウザのログイン状態を確認。
- Pythonが見つからない:インストール時のPATH設定を見直すか、再インストール。
- Codex拡張が見つからない:発行元OpenAIでフィルタ、名称変更の可能性を考え、「OpenAI」公式拡張を再検索。
手順2: APIキーを安全に用意する

2-1 なぜ必要か
APIキーは施設の入館証のようなもの。落とすと誰かに使われてしまいます。鍵をコードに書かず、環境変数や.envで安全に保管します。
2-2 画面で行う操作
- OpenAIダッシュボードで「API keys」セクションに入り、新しいキーを発行。
- プロジェクト直下に.envを置き、同じ場所に.env.exampleも用意します。.env.exampleには項目名だけ(例:OPENAI_API_KEY=)を書き、値は入れません。
- gitを使う場合は.gitignoreで.envを除外します。
2-3 確認と注意
- 動作確認は、アプリから環境変数を読み取れるかだけを試します。実際のキーの文字列をログに出さないでください。
- 環境変数名の推奨例:OPENAI_API_KEY。
手順3: エージェントにアプリを作ってもらう

3-1 目的
Codexに、最小の要約アプリを作る依頼を出します。依頼文は長くてもOK。必要なファイル、Responses APIの利用、APIキーの安全管理、動作確認方法まで具体的に書きます。
3-2 Codexに送る依頼文をコピー
このボックスをコピーして、VS Code内のCodexチャットに送ります。
Codexに送るプロンプト
目的:OpenAI APIのResponses APIを使って、文章を短/中/長で要約する最小のPythonアプリ(CLI)を作ってください。私はコードやコマンドを直接入力しません。必要なファイル作成・内容提案・実行方法の指示まで、VS Codeのターミナル操作を含めて案内してください。
要件:
- ファイル構成:main.py、requirements.txt、.env.example、README.md をプロジェクト直下に作成。
- 安全な鍵管理:.env と環境変数から OPENAI_API_KEY を読み込み。コードにキーの実値は絶対に書かない。READMEに「ユーザーが自分で .env に設定する方法」を手順化。
- SDK/呼び出し:OpenAI Python SDK v1を使い、Responses APIで要約を生成することを明記。具体的なクライアント例は client = OpenAI(); client.responses.create などの形を使ってください。モデル名は固定しないで、READMEに「ユーザーが変更できる」旨を記載。
- 機能:
- 引数または起動後の選択で、要約長を short/medium/long から選べる。
- 端末に注意書き(個人情報や機密を入れない)を最初に表示。
- 入力テキストを受け取り、3〜5行(shortの目安)で要約を表示。medium/longでは行数や密度を少し増やす。
- 日本語入力に最適化されたプロンプトを用意。英語でも動作。
- エラー時はユーザー向けに分かりやすいメッセージ(例:キー未設定、ネットワーク不調)。
- 実行方法:
- Windows と macOS で仮想環境の作成と有効化コマンドをそれぞれ案内し、(venv) の表示が出たら成功と説明。
- requirements.txt のインストール、アプリの起動手順を提示。
- テスト:
- サンプル文章で短/中/長の3パターンを確認する手順を書いてください。
- 質問:
- 不明点があれば、私に Yes/No で答えられる小さな質問に分けて確認してください。
出力:
- 各ファイルの全文と、実行コマンド例、想定されるコンソール出力の例。
- README に「モデル指定はユーザーが後で変更可能」「Pricing/仕様は変わるので公式ドキュメント参照」の注意を記載してください。
3-3 Codexが作るものと確認ポイント
- requirements.txtにOpenAI SDK v1が含まれている。
- main.pyで環境変数OPENAI_API_KEYを読み、Responses APIで要約を生成している。
- README.mdにモデル変更の方法、.envの書き方(値は空)、実行手順、注意書きがある。
手順4: 動かして確認する

4-1 目的
アプリを実際に動かし、要約が返ることと、長さ切り替えが効くことを確かめます。
4-2 画面で行う操作
- VS Codeのメニュー「Terminal→New Terminal」でターミナルを開く。
- Codexが提示した手順で仮想環境を作成・有効化。(成功サイン:(venv)のような表示)
- requirements.txtのインストール→.envの設定→アプリ起動。
4-3 確認のしかた
- サンプル文章を貼り付けて「short」で3〜5行の要約が出る。
- 「medium」「long」にすると、内容がより詳しくなる。
- 待ち時間中は進行表示が出て、終わると要約が表示される。
4-4 うまくいかないとき
- キー未設定などで止まるときは、.envの場所(プロジェクト直下)と環境変数名(OPENAI_API_KEY)を再確認。
- ネットワーク不調時は数分後に再試行。
手順5: エージェントと直す

5-1 要約が長すぎ/短すぎる
Codexに「shortは最大5行、mediumは7行、longは箇条書き10項目まで」など、行数や書き方のルールを明確に伝えてプロンプトを修正してもらいます。料理の味見をして塩加減を整えるのと同じです。
5-2 入力が長すぎる
トークン超過の可能性があります。Codexに、長文を段落で分割して順次要約し、最後に統合する処理の追加を依頼します。
5-3 安定化(ログ・リトライ)
ログ出力や一定回数のリトライ、タイムアウトの指定を入れてもらい、失敗時の再実行をしやすくします。
よくあるエラー

- APIキー未設定
画面で見えること:AuthenticationError などのエラー表示。
よくある原因:環境変数が読み込めていない。.envの場所が違う。
最初に確認:.envがプロジェクト直下、OPENAI_API_KEYが空でない、.gitignoreで保護。
Codexへの質問例:.envをプロジェクト直下に置いたのに AuthenticationError が出ます。OPENAI_API_KEY の読み込み確認コードを追加し、ログには値を出さない形で動作確認する方法を提案してください。 - Rate limit/ネットワークエラー
画面で見えること:RateLimitError や APIConnectionError。
よくある原因:短時間の呼び出し過多、回線不調。
最初に確認:リトライ間隔、呼び出し頻度、ネットワーク状態。
Codexへの質問例:RateLimitError / APIConnectionError が出ます。指数バックオフのリトライとタイムアウト設定を追加してください。ユーザー向けメッセージも改善してください。 - JSON/エンコードエラー
画面で見えること:JSONDecodeError や UnicodeEncodeError。
よくある原因:応答の扱い方や文字コードの不一致。
最初に確認:レスポンスの取り出し位置、UTF-8設定。
Codexへの質問例:日本語の出力で文字化けが発生します。UTF-8固定での入出力と、Responses APIからテキストを安全に取り出すコードに直してください。 - トークン上限超過(入力が長すぎ)
画面で見えること:InvalidRequestError や長さに関する警告。
よくある原因:長文を一度に投げている。
最初に確認:入力文字数、段落分割の有無。
Codexへの質問例:長文を要約するとエラーになります。段落ごとの分割要約→最後に統合、を自動化してください。進行表示も付けてください。 - 依存未インストール/仮想環境未有効
画面で見えること:ModuleNotFoundError、コマンドが見つからない。
よくある原因:venvが有効化されていない、requirements.txtを入れていない。
最初に確認:(venv)表示、pipの実行先。
Codexへの質問例:(venv) が表示されない/ModuleNotFoundError が出ます。Windows/macOS 別に有効化コマンドと確認方法をもう一度案内してください。
次に試すこと

- ファイル入力(.txt/.md)対応。CLIでパスを指定して読み込み。
- 日本語/英語の自動判定でスタイル切替(敬体/常体や要点数)。
- 簡易GUI化(VS CodeのWebviewなど)。
- 要約の根拠行を引用表示(原文の行番号付きで出力)。
まとめ

最小機能→安全な鍵管理→小刻み改善、という流れが基本です。Codexとの対話プロンプトを資産として残し、次回以降の開発を早く確実にします。仕様や料金は変わるため、都度、公式ドキュメントで確認しましょう。
次は、シリーズ第4回の記事で、より長い文を扱う分割要約と簡易GUI化に挑戦します。(公開後にリンクを追記します)